2009年05月28日

S・J・ローザン「冬そして夜」

開高健がエッセイのどこかで、その国の風俗を知るにはその国の三文小説を読むのがよい、というようなことを書いていた。

MWA最優秀長編賞を受賞した本書を三文小説とはいわないが、開高健のいうことはうなずける。

本当にアメリカはスポーツ狂の国だ。三大スポーツのひとつで動く金が他の国の国家予算より大きいぐらいだから当たり前ともいえる。

これを読む前に町山智浩「USAスポーツ狂想曲 アメリカは今日もステロイドを打つ」という面白いコラム集を読んでいたのだが、これがいくらか助けになった。もしこの本を読んでなかったら、この小説の舞台であるアメフト至上主義の町の状態はあまりにも荒唐無稽だから、作者が面白がって考え出した現実ばなれした架空の町としか思えなかっただろう。そう思ってしまうと胡散臭いSFでも読まされているような気になり、馬鹿らしくて途中で投げ出していたかもしれない。

解説にもあるように映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」で薄められていたという、体育会系の生徒(ジョックス)VSその他の学生(ガリ勉、オタクなど)との確執について問題を喚起している点でよい小説ともいえる。

前述した「USAスポーツ狂想曲 アメリカは今日もステロイドを打つ」は現代アメリカを紹介するノンフィクションとしても出色で、下手な小説よりも泣けてしまうようなお話がいくつも入っているからおすすめである。









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2009年05月23日

フランシス・アイルズ「殺意」

瀬戸川猛資は「夜明けの睡魔」の中でこの作品が傑作だと言っている。

たしかに、この作品は、傑作だった。

しかし、この作者の別名義アントニー・バークリーの「毒入りチョコレート事件」も傑作だと言っている。

以前この「毒入りチョコレート事件」を読んだが、それほどピンとこなかった。また読み返す必要がありそうである。

「夜明けの睡魔」の中で「犯行以前」もほめている。これは「レディに捧げる殺人物語」の前の邦題である。「試行錯誤」はそれより面白いというからどんなものだろうといっているが、瀬戸川猛資は夭折とまではいかないが、早死にしているので、読まなかったのかもしれない。(創元ライブラリの文庫の帯に『「私もいつかここに取り上げてほしかった」宮部みゆき』と書いてある)

実に上質のメロドラマとしても読める。ストレスもなく、というより先が気になってすいすい読みすすめることができた。心理描写は凡百の純文学をはるかに凌駕している。

皮肉な結末には思わずニヤリとしてしまった。






ラベル:海外エンタメ
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2009年05月20日

帚木 蓬生「閉鎖病棟」

山本周五郎賞受賞作。

帚木蓬生は、「三たびの海峡」から入った。

「三たびの海峡」はすごく面白かった記憶がある。

それから何冊か読んで、「安楽病棟」でとまっていた。

重いテーマでちょっと冗長だったから、それから遠ざかっていた。

でもこの「閉鎖病棟」はなかなかよかった。

読者を精神病患者に感情移入させるのは難しいことだと思うが、

うまくできていた。




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2009年05月19日

宮部みゆき「今夜は眠れない」

読みやすかった。

宮部みゆきは久しぶりだった。

以前「火車」を読んだが、それに比べてこれは軽いテイストだった。

しかし最後の謎解きは、無駄なく、うまくできていて、感動した。

宮部みゆきは超能力ものが好きだったが、しばらくはミステリ中心に読むことになりそうだ。


ラベル:国内エンタメ
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2009年05月17日

ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」

かなり前「グリーン家殺人事件」を読んだ。トリックにあまり関心しなかったため、それから離れていた。

仕事も一段落し、ブログに戻れるので、気合いを入れて読んでみた。

幸いとても読み応えがあった。

サイコキラーものの嚆矢といってもいいだろう。

作品中ファイロ・ヴァンスはこのサイコキラーをこう表現している。

「この人殺しは、ふつうの意味でも狂人ではありませんよ。おそらくは、ほかのすべての点では正常なのです。実際、頭脳はすばらしいかもしれない、ただひとつの欠点をのぞいてはね―つまり、私にいわせれば、あまりにすばらしすぎるのです。わき道にそれた思索に熱中して、ものの釣合いという感覚をいっさいなくしてしまったんですよ」

この型が受け継がれ、レクター博士へとつながっていく。

しかしグリーン家のときは、あまり気づかなかったが、ヴァン・ダインの衒学趣味にはびっくりした。ヴァンスが自殺の薀蓄をたれているときに、デモステネス、アリストテレスのことを喋っていたかと思うと、それからいきなり二千年ほど飛んで、乃木希典まで引き合いに出すのだ。ヴァン・ダインの博覧強記のなせる業なのかもしれないし、乃木希典が当時の欧米では日本人として想像以上に有名だったからなのかもしれない。

サイコキラーものとしては、クイーンで一番面白いと考える「九尾の猫」と並ぶ傑作だと思う。「九尾の猫」の犯人を覚えていた影響で最後まで楽しめたともいえる。余韻が残るという意味ではデヴィッド・マーティンの「嘘、そして沈黙」がサイコキラーものとしては一番だった。








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